
すさみ町旧紀伊の漁村海難霊
和歌山県西牟婁郡すさみ町は紀伊半島の南端に位置し、黒潮の流れる太平洋に面した漁村である。町域の90%以上が山林で、平地に恵まれない地形のなかで、漁業が主要な生業となってきた。枯木灘と呼ばれる海岸は潮風が強く樹木の生育が悪いことが地名の由来で、ごつごつとした岩礁が続く難しい海域である。江須崎はカスガ神社の社叢を有する聖地で、吉野熊野国立公園に指定されている。 すさみ町の漁業はカツオ(ケンケン鰹)、イセエビ、ブリなどを対象とし、黒潮の影響を受けた豊かな漁場に支えられてきた。同時に、台風や土用波の季節には荒れやすい海での危険と隣り合わせの生業である。町は6世紀から熊野地域の中心地として発展し、江戸期には口熊野奉行所が置かれて南紀支配の拠点となった。現在のすさみ町は1955年に複数の村が合併して発足した。 港や海岸での遭難は漁村の歴史に内在する重い記憶であり、彼岸や盆に線香を手向ける習慣が地元に今も残る。海で生きてきた者たちの畏れと祈りが、この土地の風景に重なっている。








