
三次市霧の海(三江線廃線跡)
広島県三次市を流れる江の川沿いに残る三江線の廃線跡は、1975年に全通した鉄道路線が2018年3月31日に営業を終えた後、山間盆地に遺された遺構である。三次盆地は西城川・馬洗川・可愛川が合流して江の川となる地形に位置し、晩秋から初春にかけて、川が運んできた冷気によって川霧が発生する。霧は地表50~100メートルの間に液体のように立ちこめ、廃ホーム周辺は特に視界が遮断された環境となる。 三江線は全通までに45年を要した後、43年の運行で廃止された。沿線の過疎化、少子高齢化、マイカー利用の拡大、および2006年と2013年の大規模災害による長期運休が廃止の主因である。廃線後、三次市は一部区間をレールマウンテンバイクなどの観光施設に転用し、旧駅舎の保存活動も進行中である。 かつての駅舎や線路、待合室といった建造物は、地域を長く結んだ鉄路の物理的な痕跡として残存する。霧深い夜間に訪れた場合、廃絶された空間に対する不安感、霧による知覚の歪み、線路を伝わる風音が、往来した列車への記憶と交錯する可能性がある。










