
香川・讃岐富士付近の廃トンネル
香川県丸亀市の飯野山(讃岐富士)は標高422メートルの円錐形の山で、瀬戸内海を望む平野の象徴とされてきた。周辺の讃岐平野は東西24キロメートル、南北43キロメートルの広がりを持ち、古代から農業の中心地である。この地域は降水量が少ないため、奈良時代から江戸時代にかけて膨大なため池と用水路が整備された。現在も香川県内に14,000カ所のため池が存在し、その多くが江戸時代に造成されたものである。 飯野山の麓から周辺丘陵地にかけて、かつての街道や用水路、農業灌漑施設の関連インフラが張り巡らされていた。昭和中期から後期にかけての地域開発と新道整備に伴い、これらの古い輸送路は次々と廃止され、素掘りや簡易構造のトンネルも通行止めになった。現在、山麓や丘陵地に散在する廃トンネルや切り通しは、土木工事の痕跡として地形に刻まれている。苔むした坑口や樹根に覆われた内壁は、半世紀以上前の建設技術と地域の交通変遷を物理的に示す遺構となっている。これらの廃トンネルは公式な産業遺跡としては指定されていないが、近年の廃道探訪文化の中で記録・研究の対象として注目されるようになった。



