
四万十川(中村市廃橋付近)
高知県西部を流れる四万十川は、本流上に大規模なダムを持たず「日本最後の清流」と称される河川です。中村地域を流れる下流域では、川幅が広く流れも緩やかになり、古くから舟運の要路として漁業や物資輸送を支えてきました。この一帯に残される沈下橋は、洪水時に川に沈むように設計された欄干のない橋で、九つの橋が四万十市内に現存し、最も下流の佐田沈下橋は全長291.6メートルの土地の象徴となっています。 四万十川下流域は古くから水害と隣り合わせの環境でした。1946年の昭和南海地震による津波は下流域に大きな被害をもたらし、毎年のように増水時の危険が地域の暮らしに刻まれてきました。橋から飛び込むなど不用意な行動による事故も繰り返され、川の恩恵と危険性は同時に存在します。廃橋付近で人影が見えるという報告は、こうした水難の歴史と、川と共存してきた人々の記憶が、薄暗い水面に投影される心理的な現象と考えられます。








