
相馬市旧相馬野馬追の戦死霊
福島県相馬市は、太平洋に面した相馬地方の中心都市であり、国指定重要無形民俗文化財「相馬野馬追」の伝承地として千年以上の歴史をもつ。野馬追は相馬氏の祖が軍事訓練として行ったとされる神事に由来し、甲冑を纏う騎馬武者が原野を駆ける勇壮な祭礼として知られ、神旗争奪戦や御小人の野馬懸など多彩な神事が今も継承されている。市域の原野や古道は中世から近世にかけての合戦地でもあり、武士の暮らしと祈りの記憶が土地に重ねられてきた。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、野馬追の時期前後に原野の縁の細道を歩くと、霧の向こうから馬蹄に似た規則的な響きと、鎧の擦れ合うような金属音が遠く近く届いた、というものである。月夜の野に旗指物のような細長い影がはためいた、低い陣太鼓の余韻のような音を聞いた、夜風に乗って号令のような短い声が抜けていったように感じた、と語る訪問者もいる。 地元では、合戦に散った武者と、神事を支え続けた人々への弔いと敬意が世代を超えて受け継がれ、神社や祠を中心に祈りの文化が今も濃く残る。現象の話は怪異というより、相馬の歴史と祭礼の重みを伝える物語として穏やかに語られる側面が強い。 野馬追関連の祭場や原野は私有地・神域を含み、夜間の無断立入は禁止される。心霊目的の深夜徘徊は厳に控え、訪問は日中に公開行事や資料館を通じて文化に触れ、戦没者と祭礼を担う人々への深い敬意と弔意を保ち、騒ぐ行為や撮影マナーにも細心の配慮を払うこと。