山道・峠·島根県 大田市
三瓶山
島根県大田市にある三瓶山(さんべさん)は、標高1,126メートルの男三瓶を主峰とする六峰の集合体である。男三瓶、女三瓶、子三瓶、孫三瓶、太平山、日影山が、中央の室の内と呼ばれる旧火口を囲んで放射状に並ぶ独特の山容で知られる。大山隠岐国立公園の構成資産のひとつで、島根県の自然景観の代表例である。
地学的には、約20万年前から複数回の噴火活動を続けてきた火山である。最新の大規模噴火は約4,000年前、縄文時代中期にあたる時期の噴火で、火砕流と降下軽石が広い範囲を覆った。この噴火による埋没林が「三瓶小豆原埋没林」として大田市の小豆原地区で発見された。
埋没林の発掘調査は1980年代の道路工事中の偶然の発見から本格化した。地表から深さ10メートル以上の地中に、当時のスギ、ヒノキ、トチノキなど30本以上の巨木が立ち姿のまま埋まっていた。最大級のスギは高さ12メートル、直径2.6メートルにも達する。火砕流と火山泥流が当時の森林を一瞬で覆い隠し、嫌気的環境下で炭化や腐朽が進まず、立ち姿のまま保存された希少な事例である。
三瓶小豆原埋没林は2007年(平成19年)に国の天然記念物に指定された。発掘地に島根県立三瓶自然館サヒメル分館の埋没林公園が整備され、立ち姿のままのスギを地下展示室で間近に観察できる。世界的にも珍しい立ち木のままの埋没林として、火山学者や植物学者の研究対象となり、国際学術交流の対象にもなっている。
出雲国風土記(733年成立)には、国引き神話に三瓶山が登場する。新羅から土地を引き寄せた巨人神話で、引き寄せた土地を縛り付けた杭が三瓶山だとされる。出雲地方の地理観と神話世界が結びついた古代の地名語源として、民俗学・神話研究の対象になっている。
登山道は男三瓶山頂への複数のルートが整備され、ファミリー向けから本格的な縦走まで難易度を選んで楽しめる。三瓶温泉、三瓶自然館サヒメル、北の原キャンプ場など、滞在型観光の施設も周辺に整備されている。三瓶観光協会の公式サイトで最新の登山道情報・天候情報が提供されている。