
御在所岳(斜面の廃ロープウェイ小屋)
三重県と滋賀県の県境に位置する標高一二一二メートルの御在所岳は、鈴鹿山脈の主峰の一つとして、ロープウェイや複数の整備された登山道が長年親しまれてきた人気の山域である。山中の急峻な斜面には、かつて運用されていた施設の残骸や旧ロープウェイ関連の小屋跡が今も点在しており、霧の濃く立ち込める夜にはその輪郭が不気味な影を見せると、登山者や夜間に山道を通行する人々の間で、長く静かに語り継がれてきた土地である。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、霧の濃い夜に廃施設の近くを通過すると、廃屋の方向から戸の軋むような乾いた響きが届いた、というものである。斜面の奥に白い人影が一瞬だけ見えて霧に溶けるように消えた、強い静寂のなかで足音だけが背後についてくるように感じた、と語る登山者もいる。山岳遭難の歴史と厳しい自然のなかで、施設の景観が物語として立ち現れている。 地元では、御在所岳で遭難された方々への弔いが、山岳救助関係者と登山愛好者の間で世代を超えて受け継がれてきた。慰霊の碑や案内は安全登山の啓発と結びついており、現象の話も山の畏怖と命の大切さを伝える語りとして大切にされている。 御在所岳の山中は急峻で、滑落や低体温症、道迷いなどの危険が常にあり、夜間の登山や廃施設への接近は重大事故につながる。心霊目的の夜間入山は厳に控え、訪れる場合は日中に整備された登山道とロープウェイを利用し、山と遭難された方々への敬意を欠かさないこと。