
小樽運河廃倉庫群
小樽運河沿いに立ち並ぶ廃倉庫群では、夜間に人影のような黒いシルエットが石壁の前をゆっくりと移動するのを目撃したという証言が、地元の人々の間でひそかに語り継がれている。明治・大正期に港湾労働者が過酷な環境のもとで働き、命を落とした者も少なくなかったとされており、「荷を担いだ男の霊が今も倉庫の周囲をさまよっている」という噂が絶えない。また、夜の運河沿いを歩いていると背後から足音が聞こえてくるが、振り返っても誰もいないという体験談も複数報告されているとされる。倉庫の窓から無数の顔が覗いているように見えた、という声もあり、特に観光客が引けた深夜帯に独特の気配を感じる場所として一部の怪談愛好家に知られている。 小樽運河は1923年(大正12年)に完成した全長約1,140メートルの人工水路で、明治後期から大正期にかけて「北のウォール街」と呼ばれるほど栄えた港湾都市・小樽の物流拠点として機能した。石造・煉瓦造の大型倉庫群が連続して建てられ、北海道の石炭や農産物、海産物の積み出しを担っていた。戦後は海運の中心が他港へ移り、倉庫の多くが機能を失った。1973年から始まった運河保存をめぐる論争を経て、1986年に折衷案で決着し、現在は観光地として再生。沿岸の倉庫はレストランやガラス工房などに転用され、歴史的建造物としても保護されている。JR小樽駅から徒歩約10分。