
鎌北湖
埼玉県毛呂山町、奥武蔵の山ふところにたたずむ農業用の人造湖。1935年に灌漑用として築かれた古い溜め池で、「乙女の湖」とも呼ばれ、紅葉やヘラブナ釣りの名所として親しまれてきた。一方で、湖畔に長く廃墟のまま残ってきた旅館をはじめ、入水にまつわる暗い噂が積み重なり、埼玉県内でも知られた心霊スポットとして語られるようになった。湖を取り巻く杉木立は日中でも薄暗く、水面に山影が落ちる夕方には、釣りや紅葉でにぎわう観光地としての穏やかさとは別の、ひんやりとした気配が漂うと言われる。心霊番組や雑誌でも繰り返し取り上げられ、肝試し目的で深夜に訪れる若者が後を絶たない時期もあった。 夜間の湖畔では、水面に人の顔のようなものが浮かんで見えた、誰もいないのに水音や呼ぶ声がした、廃旅館の窓に明かりや人影が見えたといった体験談が語り継がれている。早朝に釣りをしていた人が、背後に立つ気配を感じて振り返ると誰もいなかった、という話も伝わる。とりわけ霧の出る朝夕には、湖面と空の境が溶け合って見え、ひとりでいると心細さを覚える人が多い。 地元では、湖で命を絶った人々への供養の念が共有され、興味本位で騒ぎ立てる行為は慎むべきとされている。 湖畔の道は狭く、夜間は照明も乏しく転落の危険がある。老朽化した廃建物への無断の立ち入りは倒壊や事故を招きやすく、不法侵入にもあたる。訪れる際は日中の散策にとどめ、釣り場や周辺のマナーを守り、湖で亡くなった人々への鎮魂を第一に考えること。