
千里山トンネル
大阪府吹田市千里山に残る旧道トンネルは、千里丘陵の起伏を抜けるために設けられた古い隧道で、住宅街化が進んだ現在も坑口が静かに口を開けている。新道整備に伴って通行量は大きく減り、内部の照明も乏しく、昼間でも薄暗い空気が淀む独特の空間が広がる。長い供用期間のあいだに起きた交通事故の犠牲者や、付近で命を落とされた方々への弔いの気持ちが、千里の住民のあいだに世代を超えて静かに受け継がれてきた土地である。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、通行中にふと霊の存在を感じる、というものである。坑内の奥のほうから女性の声に似た高い響きが聞こえた、走行中の車のメーターやライトに原因不明の不具合が一時的に生じた、深夜の坑口付近で人影とも陰ともつかない輪郭が壁面に映っているのを見た、と語る訪問者がいる。風の通り方が独特だと話す自転車利用者も少なくない。 地元では、千里山の旧道は夜間に近づかないものとして子どもたちに語り伝えられてきた。怪異の話は煽情的に流通するというより、住宅地のすぐ脇に残る古い隧道の暗さと、亡くなった方々への配慮とがない交ぜになった注意喚起として機能してきた側面が強い。 旧トンネル付近は歩道幅が狭く、夜間の歩行は車両事故の危険が高い。心霊目的の深夜訪問や肝試しは厳に控え、近隣住民の生活を乱す行為は避けたい。訪れる場合は日中に周辺の整備された道路から外観を確認するにとどめ、犠牲者への敬意を欠かさないこと。