
似島
広島県広島市南区の似島は、広島湾に浮かぶ円錐形の小島で、明治期に陸軍の検疫所が置かれて以来、日清・日露の戦役と関わる長い歴史を持つ土地である。原爆投下後には臨時野戦病院として多数の被爆者が船で運ばれ、島内で力尽きた方々が今も島の各所に眠るとされる。戦後は遺骨収集と慰霊活動が地域と行政、宗教者によって長年続けられ、現在は平和学習と歴史継承の島として静かに守られ、訪れる人々に戦争と核の記憶を伝え続けている。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、夜の海岸や旧検疫所跡のそばで、潮鳴りに混じって低くすすり泣くような声を聞いた気がした、というものである。砂浜の遠くに白い人影が並んで立っているように見えた、樹林のなかで足音だけが通り過ぎる気配を感じた、夕暮れに人気のない道で線香に似た香りが風に乗って届いた、と語る訪問者もいる。これらは興味本位で消費される話ではなく、被爆と戦没の記憶への深い哀悼として地域に受け止められてきた。 地元では遺骨収集と慰霊祭が長年続けられ、平和学習の場として小中学生の訪問も多い。語られる現象も、ヒロシマの記憶を風化させず次世代へ伝えるための静かな祈りとして共有され、住民は来訪者に対しても節度ある見学を求めている。 ここは観光地である前に祈りの島である。心霊目的の深夜訪問や騒がしい撮影は厳に慎み、訪れる際は日中に資料館や慰霊碑を巡り、被爆と戦没で命を落とされた方々への哀悼を最優先とし、住民の生活と平穏を尊重すること。