波治加麻神社
伊豆大島の泉津地区に鎮座する波治加麻神社は、平安時代の延喜式神名帳にも記載される古社で、事代主神の子・波治命を祀る。境内の大木の根元には、若者25人が丸木舟を作った跡と伝わる杉の切株が残り、その傍らには「日忌様」と呼ばれる霊を祀る小さな祠が二基置かれている。伝承によれば、かつて泉津を治めた代官の圧政に耐えかねた25人の若者が代官を討ち、境内の大杉を切り出して作った丸木舟で島を脱出したという。利島・新島・神津島のいずれにも身を寄せる場所は与えられず、旧暦1月24日、一行は消息を絶ったとされる。以来、この霊は毎年同じ夜に島へ帰ってくると信じられ、住民は日没から夜明けまで屋内にこもり、雨戸にトベラや柊の葉を挿し、神棚に25個の餅と海の小石を供えて、外を出歩かず海も見ないまま静かに過ごす風習を守ってきた。同様の言い伝えは伊豆諸島各地に伝わる「海難法師」の起源譚のひとつとされ、この神社と祠がその発祥地とされている。