海津大崎のトンネル
海津大崎は琵琶湖畔にせり出した岩礁地帯で、桜の名所として知られる観光地である。滋賀県道557号の湖岸道路には、昭和10年から11年にかけて掘削された5本のトンネルが連なり、中でも中央の2本目から4本目にかけての短い区間で怪異の噂が集まっている。伝えられる内容は、トンネルを抜けた後に車体へ手形状の跡が付いていたというもの、走行中に前照灯が突然消えて事故につながったというもの、甲冑姿の人影や、帽子とコートを着た男性が路上に立つのを見たというものなど多岐にわたる。ネット上ではこうした噂と並んで、通過時に撮影した写真にオーブと呼ばれる発光体が写り込んだという報告も見られる。近隣の大崎寺には、天正10年(1582年)の安土城落城の際、明智光秀方の攻撃で焼失した城の建材に血痕が残り、その建材で本堂を建て戦没者を弔ったという由緒が伝わる。この建材は昭和41年(1966年)の阿弥陀堂改築時に天井へ転用され、現在も「血天井」として保存されており、寺の由緒がトンネルの怪異と結び付けて語られることがある。桜の時期には花見客で賑わう一方、それ以外の季節は人通りが少なく静まり返るこの湖岸道路の一角が、様々な怪異譚の舞台として知られるようになっている。