
清川村宮ヶ瀬ダム湖底の霊
神奈川県清川村に広がる宮ヶ瀬ダム湖は、首都圏の水源を担う重力式コンクリートダムとして2001年に運用を開始した人造湖である。建設のために宮ヶ瀬・落合・青山などの集落が水没し、長くこの谷で暮らしてきた方々はそれぞれ移転を余儀なくされ、集落の鎮守社や墓地も移されていった。渇水期には湖底の石垣や旧道の路面が再び姿を現し、失われた集落の輪郭を静かに語りかけ、訪れる人の心に故郷の重みを伝えている。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、夜の湖畔に立つと水中から青白い光がぼんやり浮かび上がり、湖面に集落の灯りが映り込んでいるかのように見える、というものである。周辺道路で突然濃霧が発生し視界が閉ざされたと語る運転者、対岸から太鼓と祭囃子のような微かな音を聞いたと記す投稿、湖面から名を呼ぶ声を聞いたと感じた訪問者がおり、語りはいずれも故郷喪失の哀しさを帯びて静かに伝えられている。 地元では、故郷を水底に手放された住民の方々への敬意と慰霊が、移転先で続けられる祭礼や湖畔の慰霊碑への参拝を通じて静かに受け継がれており、現象の語りは哀惜の物語として共有され、ダムと共に生きる地域の感情の複雑さと、水底に眠る故郷への思慕を今に静かに伝えている。 ダム湖周辺は急斜面と落水の危険があり、堤体周辺は立入規制区域もある。夜間の心霊目的訪問は厳に控え、日中に水とエネルギー館や慰霊碑を訪ね、故郷を手放された方々への深い敬意を欠かさず歴史に静かに触れてほしい。