
油山
福岡市の南西部、城南区・早良区・南区にまたがる標高五百九十七メートルの油山は、市民に親しまれる自然公園と牧場、市民の森を擁する一方、太平洋戦争末期に旧日本軍が撃墜機の連合軍搭乗員を山中で処刑したいわゆる油山事件の現場として知られる。戦後にBC級戦犯裁判で関係者が処罰され、現地には犠牲となった搭乗員と戦争全般の犠牲者を悼む慰霊のための碑が建立され、平和の祈りの場として大切にされてきた歴史を持つ。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、夜間に登山道を進んだ者が、樹間の遠くに動かぬ人影の輪郭を一瞬だけ認める、というものである。風が止んだ斜面で低い呻きに似た声が断続的に届いたという声、ヘッドライトの光芒に肩のあたりまでの影が浮かんだという証言、足音が背後を一定の距離で歩く感覚を覚えたという話が、登山者の間で静かに残されてきた。 地元では、処刑された搭乗員の方々と戦争に巻き込まれた全ての犠牲者への弔いが、碑前の供花とともに静かに受け継がれてきた。福岡市民の間でも、興味本位で踏み込む場所ではないという意識が広く共有され、学校や市民団体による平和学習の場としても語られ続けている。 夜間の登山は滑落・遭難の危険が高く、単独行動は避けるべきである。心霊目的の深夜訪問は厳に控え、訪れる場合は日中に慰霊碑へ手を合わせ、処刑された方々と戦没者すべてへの深い哀悼を最優先とし、撮影や発信にも節度を保ち、軽口の言及は慎みたい。