
旧津々良トンネル
東北地方の山間部に位置する旧津々良トンネルは、地方道の難所を貫通するために建設された古い隧道のひとつである。坑門には正確な建設年や事業主体を示す銘板が残っているが、現在は風化と汚損のため判読困難な状態にある。文献資料では昭和初期から戦後復興期にかけての建造との推定があるが、確実な記録に当たれていない。 沿線では生活道路として長く使われ、近隣集落の通学路や物流路として機能してきた。集落の高齢化が進み、利用者が減少した1990年代以降、新道や峠経由のバイパスが整備されるにつれて、旧トンネルを通行する車両は減少した。現在は沿線の生活道としての役割をほぼ終え、ハイキングや撮影目的の訪問者がときどき訪れる程度となっている。 構造物自体は、両坑門ともに馬蹄形断面のシンプルなコンクリート造で、装飾性は乏しい。坑門上部には地名を刻んだ銘板の痕跡が残るが、判読は困難。内部は照明設備がなく、湿度が高いため壁面には苔が広がる。両坑口に植生が迫り、車両通行は事実上不可能。徒歩であれば通過可能だが、落石や陥没の兆候があるため、自治体は事前確認を推奨している。 地元の郷土史研究家による調査では、トンネル開通時の住民の喜びや、開通記念の式典の様子を伝える証言が残っているとの記録がある。一方で、本記事執筆時点でこのトンネルが文化財指定の対象になっている記録は確認できていない。同種の昭和期コンクリート造隧道は全国各地の山間部に現存し、土木史研究の対象として近年再評価が進んでいる。
