
佐井村仏ヶ浦の霊場怪異
青森県佐井村の仏ヶ浦は、津軽海峡に面した約2km続く海岸に白緑色の凝灰岩が断崖をなす景勝地である。国の名勝・天然記念物に指定されている。岩体は約400万年前の水中噴火で形成され、その後も波浪と凍結風化により日々削り取られ、現在も形状を変え続けている。 巨岩の輪郭が仏像や道具を想起させることから、如来の首、五百羅漢、蓮華岩など仏教的な名が付与されてきた。1922年に文人・大町桂月がこの地を訪れ、その美観を紹介したことで広く知られるようになった。 恐山からみて西方に位置する仏ヶ浦は、古くから霊場恐山の信仰圏に包摂された。死者がこの世との境界を往来する時に立ち寄る所とされ、地蔵堂には故人の着物が奉納される風習が続く。奇岩には御詠歌が奉納され、年中行事として訪問者の祈りが寄せられてきた。オカルト的怪異というより、浄土浄地として死者を悼む信仰の実践が、この空間を特異なものとしてきた。