
秋葉ダム
戦後の電力危機を背景に、天竜川沿いに1954年から1958年にかけて建設されたコンクリート重力式ダムである秋葉ダム。堤高89メートル、上流の佐久間ダムから流れ落ちる水を調整し、三つの発電所で最大128万キロワット近い電力を生み出す多目的ダムだ。しかし、その完成の陰には多くの犠牲者がいた。 1955年2月4日、第一発電所の建設現場で発破作業のミスが起きた。装填されたダイナマイト約2トンが誘爆し、瞬時に巨大な爆発が起こった。この事故により19人の作業員が即座に埋没し、重軽傷者も19人に上った。近代的な土木技術を駆使して進められた工事であっても、人命を守り切ることはできなかったのだ。建設期間を通じて81人の労働者が失われたとも記録されている。 ダムの完成後、秋葉湖として整備された貯水池は北遠地方の桜の名所となり、今は年間を通じて観光客や地元の人々が訪れる。昼間は穏やかなレジャー拠点だが、その一方で、夜間の現場ではネット上で「工事現場から作業員のような人影が目撃される」「写真に映り込む原因不明の光源」「ダム入口のトンネル分岐点で体調不良を訴える訪問者がいる」といった声が繰り返し上がっている。 これらの現象は、建設時の劇的な事故と、多くの命が失われた歴史的背景から、無意識のうちに心理的な説明がつけられているのだと考えられる。ダムという構造物が、経済成長の象徴である一方で、その完成に至る人命喪失の代償を可視化する場所として機能しているのかもしれない。