
奥米トンネル
奥米トンネルは千葉県君津市の房総半島内陸部、三島湖に近い山中を貫く素掘りの隧道で、総延長は約三百メートルに及ぶ。素掘り独特の素朴な岩肌と狭隘な断面が特徴で、近隣のダム湖や林道、棚田の景観とともに房総の里山風景を形作る存在である。生活道として周辺集落の住民に長く利用されてきた一方、テレビ番組や雑誌で取り上げられたことから、首都圏近郊の心霊スポットとして名を知られる存在となった経緯がある。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、深夜にトンネル内を歩行している最中、岩肌に反響する自分の足音に混じって、別人のものらしい足音が背後で重なって聞こえてくる、というものである。出口付近の闇に人の輪郭が立っているように見えたという証言、トンネル中央付近で急に冷たい空気の塊に包まれて呼吸が浅くなったという報告も寄せられている。近隣の水辺で命を落とされた方々の記憶が、隧道の景観のなかで静かに語られている。 地元では水難事故で命を落とされた方々への弔いが、湖畔の祠や供養碑、寺院の年中行事を介して長く続けられてきた。現象の話は娯楽として消費されるべきものではなく、山道と水辺の危険を後世に伝える寓話として穏やかに受け止められている。 素掘りトンネルは落石・湧水・路面凹凸の危険があり、歩行者と車両の交錯も多い狭隘な構造である。心霊目的の深夜訪問や肝試しは厳に控え、通過する際は車両でゆっくり走行し、停車・撮影で交通を妨げず、近隣住民の生活道であることを忘れぬよう振る舞うこと。

