
弘法寺の涙石
弘法寺は千葉県市川市真間にある日蓮宗の寺院で、境内へと続く石段は千個以上の石を敷いて作られている。この石段の下から27段目、向かって左側にある一つの石だけが、晴天が続く日でも常に湿った状態を保っていることから「涙石」と呼ばれ、古くから注目されてきた。伝えられている由来によれば、江戸時代初期、日光東照宮の造営にあたり伊豆から石材を船で運んでいた作事奉行が、市川付近で船が動かなくなったため、その石材を無断でこの寺の石段に用いてしまったという。この不正が幕府に発覚し、当の奉行は責任を問われてこの石段の上で切腹させられたとされる。その際に流れた血と涙がこの一石に染み込み、以来涸れることなく湿り続けているという伝承が残る。一方で、市川市内には湧水地が多く分布しており、地下の水脈がこの石に接していることで常時湿った状態になっているとする見方もある。テレビの特番などで紹介されたこともあり、この伝説を背景に心霊にまつわる噂も付随して語られるようになったとされる。

