
大宮氷川神社裏手廃屋
埼玉県さいたま市大宮区に鎮座する武蔵一宮氷川神社は、関東有数の格式を持つ古社であり、約二キロにも及ぶ南北の長い参道の杜と広い境内は古くから武蔵国一帯の信仰の中心であり続けてきた由緒ある神域である。その裏手の住宅地に残る廃屋は、神域に隣接する立地から、霊感に敏感な人々が静かに足を運ぶ場として、ネット上の心霊談義にも繰り返し名前が挙がる場所のひとつとなっている。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、深夜近くに廃屋の前を通ると、神社の方角からゆっくり流れてくるかのような低い祝詞のような響きが、廃屋の窓辺のあたりにふと残っているように感じられる、というものである。白装束のような人影が一瞬だけ廃屋の脇を歩いて建物の影に消えた、敷地の前で急に空気が冷たくなって呼吸が浅くなった、写真に淡い縦長の光の柱のような像が写り込んでいた、と語る訪問者がいる。 地元では、氷川神社の杜と神域への深い敬意が、初詣や例大祭、十日市などの行事を通じて世代を超えて受け継がれており、廃屋にまつわる話も信仰の余韻が住宅地にそっと滲み出たものとして、穏やかな寓話のかたちで語られている。現象の話は怪異というより、古社の杜と地域信仰の存在感を伝える側面を持つ。 廃屋は私有地であり、無断立入は不法侵入にあたる。心霊目的の深夜徘徊は近隣にお住まいの方々と神社の参拝者にとって大きな迷惑となるため厳に控え、信仰の地としての氷川神社へ静かに参拝するかたちで土地に触れたい。
