三峯神社奥宮
埼玉県秩父市の山奥に立つ三峯神社は、今から約1900年前に日本武尊により伊弉諾尊・伊弉册尊を祀る神社として創建されたと伝わります。三峯という社号は、景行天皇が妙法ヶ岳・白岩山・雲取山の三つの山頂を見て命名したと言い伝えられています。
奥宮は妙法ヶ岳(標高1329メートル)の頂上に鎮座する遥拝所で、本社からおよそ2時間半の登山を要します。寛保元年(1741年)に創建されたとも記されており、秩父宮の登山記念碑が山頂に残されています。登山道は尾根筋に沿った狭い道が続き、鎖場を備えた険しい行程となっており、かつての修験者たちが修行の場として選んだ理由が地形からも明らかです。
7世紀後半に役行者が入山して修験道の足がかりが築かれ、その後、山伏たちにより信仰が関東一円に広がります。鎌倉時代以降は有力武将が寄進を行うなど、神仏習合下での修験の中心地として繁栄しました。1868年の神仏分離令により宗教的転換を迫られ、純粋な神道施設へと変わります。
信仰の中核をなすのが白狼伝説です。ヤマトタケルが東征の途中、山中で道に迷った際、白い狼が現れて導いたという由来譚から、オオカミは三峯の守護神として崇敬されるようになります。火難除け・盗難除けなどの御利益を求める「三峯講」という信仰組織が組織され、広く信仰を集めました。
現代では奥宮は「天空のパワースポット」と呼ばれ、頂上付近の樹齢800年を超す御神木や「敷石の龍神」などの信仰要素とともに、独特の磁場を持つ修行の聖地として認識されています。山頂からは広大な山々の縦走ルートが眺望でき、自然が織りなす霊性と古代信仰が重層する場所として語り継がれています。
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