
天王寺七坂
大阪府大阪市天王寺区の上町台地西斜面に、北から順に真言坂・源聖寺坂・口縄坂・愛染坂・清水坂・天神坂・逢坂と続く七つの坂道がある。総称して「天王寺七坂」と呼ばれる。台地の上下を結ぶ坂沿いには、四天王寺、生國魂神社、愛染堂勝鬘院、清水寺、安居神社、一心寺など、大阪を代表する寺社が密集する。 上町台地は古代から大阪平野を見下ろす丘陵として人々の暮らしの中心だった。豊臣秀吉の大坂城築城に伴って城下町が広がり、徳川期の寺町造成によって、台地南端部に多数の寺社が集約された。坂道沿いの石垣や石段、灯籠、地蔵などは江戸期から明治・大正期にかけての遺構を含み、近世大阪の宗教景観を凝縮した稀有な町並みとなっている。 各坂には名前の由来となる逸話や地形的特徴がある。真言坂は四天王寺との関わりの真言宗系寺院群への参道、口縄坂は石段が蛇行する地形からの命名(口縄は古い大阪言葉で蛇)、愛染坂は愛染堂勝鬘院(聖徳太子建立伝説)への参道といった具合である。 文学との関わりも深い。口縄坂は織田作之助の短編『木の都』に印象的に登場し、青春の回想を描いた一節が知られる。三島由紀夫、司馬遼太郎、藤本義一らも大阪のエッセイで七坂に触れている。大阪市天王寺区は文学散歩のルートとして案内板を整備し、観光資源として活用している。 散策コースとしての所要時間は徒歩でおよそ1時間半。地下鉄四天王寺前夕陽ヶ丘駅または恵美須町駅からアクセスでき、観光案内所で配布される七坂散策マップを使うと寺社の歴史と坂の特徴を順に巡ることができる。 夕陽丘の地名は鎌倉時代の歌人・藤原家隆が「契りあれば難波の里にやどり来て波の入日を拝みつるかな」と詠んだ歌に由来し、上町台地西側に沈む夕日の名所として知られる。秋分・春分の頃の夕日が美しく、写真愛好家の撮影スポットとしても人気が高い。


