
山寺(立石寺)
立石寺(通称・山寺)は、山形市の宝珠山中腹に貞観年間に円仁(慈覚大師)が開いたと伝わる天台宗の古刹で、千段を超える石段の参道と、断崖に張り付くように建つ堂宇群で知られる東北屈指の霊場である。元禄期に松尾芭蕉が「閑さや岩にしみ入る蝉の声」と詠んだ場所としても名高く、岩肌の参道は今も多くの参拝者と俳諧の愛好家を迎えている祈りの山である。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、夜明け前や夕暮れに石段を上っていると、人気のない参道の上方から経を誦ずる低い声が遠く聞こえる、というものである。岩窟の堂のあたりで木魚の打つような響きが風に紛れて届いた、見上げると五大堂の手すりに僧形の影が一瞬だけ見えた、石段の途中で香の匂いが漂ってきた、と語る参拝者もいる。怪異というよりは、千年以上にわたり修行が続けられてきた山の気配が、参道の景観のなかで静かに立ち現れている性格が強い。 地元では、立石寺は信仰の中心として大切に守られており、心霊スポットとして扱うことへの抵抗感が住民のあいだで強い。参道の各所には石仏や供養塔が静かに並び、修行と祈りの歴史が今も生きた形で受け継がれている霊場である。 石段の参道は急峻で滑りやすく、夜間や雨天・積雪時は転倒・滑落の危険が高い。崖際は手すりも限られている区間がある。心霊目的の深夜訪問は厳に控え、訪れる際は拝観時間内に参拝し、堂宇や石仏に触れず、千年の信仰と祈りへの敬意を欠かさないこと。


