
廃道・旧大仁街道
徳島県三好市の山間を縫って走っていた旧大仁街道は、1964年に開通したが、新道整備に伴い1998年以降は使われなくなり、現在は雑草と灌木に覆われた廃道として山中に残されている。四国山地の急峻な地形を切り拓いて造られた道であり、開通から廃道化に至るまでの数十年のあいだに、工事関係者や通行者にまつわる事故や悲しい話が、地元の人々のあいだで世代を超えて語り継がれてきた土地でもある。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、深夜に廃道へ分け入ると、霧の先を白い服を着た女性が静かに歩いており、距離を保って追いかけても決して振り返らないまま藪の中へ消えていく、というものである。夜半に女性のすすり泣きのような声が谷側から届いた、足音だけが背後を一定の距離で付いてきた、霧が急に濃くなり方向感覚を失った、と語る体験者もいる。 地元では、街道の建設や通行で命を落とされた方々、山に消えた方々への弔いが、世代を超えて穏やかに受け継がれてきた。現象の話は単なる怪異ではなく、険しい山道とともに生きてきた人々の記憶と、山への畏れを伝える寓話的な側面を強く持っている。 廃道は路盤崩落・落石・崖からの滑落・野生動物との遭遇など客観的な危険が極めて高く、夜間の単独進入は遭難確率を著しく上げる。携帯電話の電波も届かない区間が多い。心霊目的の深夜踏破は厳に控え、訪れる場合は日中に旧街道入口の公道側から地形を眺めるにとどめ、山と道に関わってきた人々への敬意を欠かさないこと。



