
御岳渓谷
東京都青梅市の多摩川上流に位置する御岳渓谷は、環境省が選定した日本名水百選のひとつで、秩父多摩甲斐国立公園内の景勝地である。渓谷は巨岩が削った複雑な岩盤地形を特徴とし、約4キロメートルの遊歩道が整備されている。多くの落差や深い淵が存在し、季節ごとに多数の来訪者をひきつけるハイキングやカヌー競技の地となっている。 渓谷の南側には標高929メートルの御岳山があり、頂上に武蔵御嶽神社が鎮座する。この神社は紀元前97年の創建と伝わり、奈良時代の736年には修験道の中心地として蔵王権現信仰が定着した。江戸時代には関東における重要な山岳信仰の霊場として発展し、江戸の守護を担う社として崇敬を集めた。渓谷の険しい地形と山上の神聖なる信仰の場が一体となる空間として認識されてきた。 一方で、御岳渓谷の多摩川は水難事故の多発地帯としても知られている。急流と深い淵の組み合わせにより、過去複数の溺水事故が記録されており、地元住民のあいだでは川の危険性についての認識が深く根付いている。渓谷の水は清冽だが、増水時の水位変化は急激で、夜間の渓流歩きは極めて高い危険を伴う。
