
志賀町旧能登原発廃炉周辺の怪
石川県羽咋郡志賀町は、能登半島の中西部に位置し、日本海沿いの漁業と稲作で長く暮らしを支えてきた地域である。沿岸の松林と棚田、北前船時代から続く小さな港町の景観が残り、四季を通じて穏やかな里海里山の風土が広がっている。地元には志賀原子力発電所が立地し、現在は廃止措置に向けた工程が段階的に進められている。施設外周のフェンス沿いには夜間の交通量がほとんどなく、海風と松林の静けさのなかで、外周道路をめぐる素朴な怪異譚が地元のあいだで静かに語り継がれてきた。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、深夜にフェンス沿いの道路を走行していると、カーナビや時計といった電子機器が一斉に誤作動した、というものである。海側の空に説明のつかない淡い光がしばらく浮かんでいたという話、外周路の途中でラジオが急に途切れ低い唸りに変わったという話も寄せられる。いずれも具体的な事故と結びつく伝承ではなく、施設の存在感が夜の景観に与える違和感が物語へと変換された色合いが濃い。 地元では、発電所と暮らしてきた歳月への複雑な思いを背景に、この種の話は半ば笑い話として、半ば畏れとともに穏やかに受け継がれている。エネルギー史と地域史の節目を映す素朴な民俗的語りとして捉える向きが強い。 外周道路は私有地境界に近く、フェンス越しの撮影や夜間徘徊は警備上の重大な問題となる。心霊目的の接近は厳に控え、地域や施設関係者への配慮を最優先に、日中の海岸線や展望所から景観を眺めるにとどめてほしい。