
珠洲市旧能登の祭礼霊場
石川県珠洲市は能登半島北端に位置し、江戸期より夏季を中心に約200ものキリコ祭りが営まれてきた地域である。キリコ(切籠灯籠)は高さ15メートル超に達する木造の照明構造で、かつての夏の浄化儀礼とギオン信仰から発展した伝統とされる。須須神社は古い由緒を持つ社で、毎年旧暦3月15日に矢を的に射る儀式を行う古い慣行が継続されている。能登一帯の祭礼は農漁の営みと結びついた信仰体系であり、半島特有の地形と海上交通の歴史が生み出した文化遺産として、2015年に日本遺産に認定された。 2024年1月の能登半島地震により珠洲市は甚大な被害を受け、沿岸部の隆起、建造物の損傷、山道の路面荒廃が生じた。震災直後、ネット上では山間の参道や岬の祠で夜間に異光や笛の音が視認されたという投稿が散見されたが、地震による地形変化、崩落した構造物による光の反射、低周波音の異常伝播などの自然現象と関連付ける見解もある。奥能登の祭礼信仰と海上での人命喪失の歴史が、不可視の世界への想起を喚起してきた背景において、地震という予測困難な災厄が重層的な心理作用を与えたと考えられる。