
廃ホテル「逢いたくて」
石川県北部・七尾市の海沿いに位置する廃ホテル「逢いたくて」は、能登半島でもよく名前の挙がる有名な廃墟のひとつで、長らくの閉業と無人化を経て、外壁の崩落や植物の侵食が進んだ独特の景観で広く知られてきた。営業時代を知る世代と、廃墟探索の文脈でしか名前を聞いたことのない世代の双方から、夜になると「過去の宿泊客が戻ってくる」と語られる心霊スポットでもある。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、外周道路から廃ホテルの方向を見ると、特定の窓だけ薄明かりが灯っているように見える、というものである。鏡の残る部屋を覗いたら奥に人影が立っていた、廊下の方向から女性のすすり泣くような声が断続的に聞こえた、と語る訪問者がいる。建物に入った経験を持つ人からは、訪問後に頭痛や倦怠感が長引いた、撮影した写真に淡い光の筋が写り込んでいたという書き込みも残されている。 地元では、宿泊施設という性格上、別れや喪失と結びつく感情を抱えた人々が訪れる場であった歴史を踏まえ、現象は「特定の事件の霊」ではなく、建物全体に積み重なった感情の残響として穏やかに語られてきた。能登半島の海と霧が織りなす独特の空気が、廃墟の重さをさらに増幅させている側面もある。 この廃ホテルは所有者が存在する私有地であり、建物の崩落・床抜け・鋭利な残置物による事故リスクが極めて高い。立ち入りは不法侵入と重大事故の双方の問題を生み、過去には行政や近隣からの注意・警告も繰り返されている。心霊目的の訪問は厳に控え、関心がある場合は外周の道路から建物を望む範囲にとどめること。