
坂井市旧丸岡城の武者霊
福井県坂井市の丸岡城は、越前平野を見下ろす小高い丘の上に建つ城で、現存十二天守のひとつとして広く知られ、古式を残す野面積みの石垣と、笏谷石の石瓦を葺いた二層三階の小ぶりで端正な天守を備えている。霞がかかると城が浮かんで見えるという土地の言い伝えから「霞ヶ城」とも呼ばれ、戦国期から江戸期にかけての城主や城下の人々の暮らし、そして攻防のなかで命を落とされた将兵への弔いの記憶を、静かに今に伝え続けている土地である。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、閉門後の天守台に近づくと、誰もいないはずの最上階の窓の奥にぼんやりと人の輪郭が見え、しばらく経つと板敷きを擦る乾いた足音と、低く抑えた咳のような音が短く届いてくる、というものである。石垣の隅で甲冑の札がこすれるかのような乾いた気配を背後に感じた、と語る訪問者もいる。 地元では、城を地域の歴史の象徴として大切に保存し、戦で散った将兵や城に仕えた人々を悼む法要や、桜の頃の祭礼の習いを、市民の手で長く受け継いできた。現象の語りも、戦の記憶への敬意のなかで、煽情を交えず穏やかに語り継がれている土地である。 古い石段や石垣は雨で滑りやすく、夜間の不法侵入は転落・骨折の危険が極めて高く、貴重な文化財の保護の観点からも固く禁じられている。心霊目的の立ち入りは絶対に控え、訪れる際は開館時間内に静かに見学し、天守や石垣に手を触れず、戦没者への弔いの心を保って城と向き合うこと。

