
龍河洞(龍河洞廃ホテル跡)
龍河洞は、香美市三宝山の中腹に開口する国指定史跡・天然記念物の鍾乳洞で、その観光地化に伴って周辺には宿泊施設が建設された時代があった。観光ブームが落ち着き経営環境が変化し経営破綻に至ったことで、近隣のホテルの一部が廃業し、当時の建物が解体されないまま静かに残されている場所が知られている。山あいの観光地に取り残された廃墟は、地方観光の盛衰を映す建物として、その場所に静かに佇み続けている。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、観光客が引いた夜更けに廃ホテルの前を通ると、無人のはずの建物の奥から人の話し声や笑い声にも似た響きが漏れてくるように感じる、というものである。エントランスホールに複数の人影らしき輪郭が一瞬よぎった、宴会場の方角から食器の触れ合うような音がかすかに聞こえたと語る通行人もいる。鍾乳洞観光に集った賑わいの記憶が、無人の建物に音の残響として静かに重なっている。 地元では、龍河洞観光を長く支えた施設への懐かしみと、地域の観光史への敬意が穏やかに、世代を超えて受け継がれている。怪談は煽情的な娯楽ではなく、地方観光の盛衰と経営の難しさを語る寓話として、地域の歴史を伝える役割を静かに果たしてきた。 廃ホテル跡は私有地で立入は厳禁、老朽化した構造体は床抜けや崩落の危険を常に伴う環境である。訪問は龍河洞本体の見学にとどめ、廃墟への侵入や撮影目的での無断接近は厳に控え、地域の観光史への敬意を保つべきである。
