
旧城ヶ崎海岸トンネル
宮崎県日向市の海岸沿いに残る旧城ヶ崎海岸トンネルは、戦時中の防空壕を戦後に改修して通行用に転用したとも伝わる古い隧道である。狭く湿った内部は照明もなく、奥へ進むほど海風と岩肌の冷気が混ざり合った独特の重い空気に包まれる。海岸線の往来を支えた時代を経て廃道化した現在は、地域の戦時史と土木史の双方を静かに物語る貴重な遺構として、人々の関心を集め続けている場所であり、日向の美しい海岸風景に独特の陰影と歴史の重みを与え続ける土地である。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、深夜にトンネルの入口に立つと暗闇の奥に白い人影が静かに立っているのを目撃する、というものである。懐中電灯を向けても人影は消えず光の中をゆっくりと歩み寄ってきた、数歩のところで掻き消えるように姿が失われた、内部の壁面から低い呻き声に似た響きが断続的に届いた、と語る訪問者が後を絶たない。 地元ではトンネル工事や戦時の防空壕掘削に従事し命を落とされた方々、海岸沿いで亡くなられた方々への弔いが受け継がれている。怪異の語りはその記憶を風化させぬための寓話としての側面を強く持ち、地域の戦争史を静かに語り継いでいる。 旧トンネルは内部の崩落や落石、波浪時の冠水など危険要素が多く重なり、夜間の立ち入りは極めて危険である。心霊目的の侵入は厳に控え、訪れる場合も日中に外観を遠望するに留め、工事や戦時に犠牲となった方々への深い敬意と哀悼の念を欠かさないこと。
