
旧小淵沢バイパス
山梨県甲州市から山梨市にまたがる山間部に通じていた旧小淵沢バイパスは、昭和期にモータリゼーション拡大を支えた地方道として整備され、急峻な谷あいに切通しとトンネル、橋梁を連ねた難所として知られた道である。後年、より安全な線形を持つ新道に役割を譲った後、急カーブと急勾配の区間は廃道化し、現在は通行止め区間として封鎖されている。冬季には凍結による転落事故が幾度も発生した、痛ましい歴史を抱える道筋である。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、薄暮の旧道を辿ると、廃トンネルの口の闇からひんやりとした空気が押し出され、車内のラジオに細かなノイズが混じり始める、というものである。橋上で誰もいないはずの方向から金属を打つような乾いた音が一度だけ響いた、ガードレール越しに谷側を覗いた瞬間に強い眩暈と耳鳴りを覚えた、車のヘッドライトが照らす路面に古いタイヤ痕が浮かんで見えた、と語る訪問者がいる。 地元では、工事に従事して殉職された方々や、冬季の事故で命を落とされた方々への弔いが、道路沿いの慰霊碑や供花のかたちで世代を超えて受け継がれてきた。旧道の話題は怪奇譚としてだけでなく、山道の安全を後世に伝える教訓として静かに語られている。 旧バイパス区間は法的に通行止めであり、無断立入は道路法違反となる。落石・崩落・転落のリスクも極めて高く、夜間の侵入は重大事故につながりかねない。心霊目的の立入は厳に控え、犠牲となった方々への敬意を保つこと。
