
八重山諸島 幽霊船
八重山諸島の沖合は琉球王国時代から東南アジア交易の中核航路として利用されてきた重要な水域である。歴史的には、16世紀から18世紀にかけて琉球の商船がこの海域を往来し、マラッカやシャムとの活発な貿易を展開していた。一方、この海域は台風の通過経路に当たり、また複雑な潮流と暗礁が多く存在することから、海難事故が後を絶たなかった。1963年8月には乗客乗員228名を乗せた客船みどり丸がチービシ沖で転覆し、86名が死亡、26名が行方不明となる沖縄海難史上最大の事故が発生している。こうした歴史的背景の中で、八重山の外洋には夜間に船の姿を見かけずに灯火が浮かぶ、櫓を漕ぐ音が聞こえるといった経験が、漁師たちの間で語り継がれてきた。沖縄の民間信仰では、望郷や無念の念を抱いたまま亡くなった者の霊魂「マブイ」が現世に留まり、さまよい続けると考えられており、未だ故郷に帰ることができない海難死者の霊が、この海域で夜ごと活動するという解釈が生まれたと考えられる。

