
群馬県草津町法師岳ロープウェイ
群馬県吾妻郡草津町、温泉地として名高い草津の周縁に、法師岳と呼ばれる山域があり、かつて観光用のロープウェイが運行されていたと伝えられる。草津白根の火山地形に近い高所への足として、登山者や観光客、スキー客に利用された時期があったが、設備の老朽化や運営の事情、利用者数の減少を背景に役割を終え、現在は施設の痕跡が静かに残る土地となっている。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、旧山頂駅跡の周辺で耳を澄ますと、滑車の軋みに似た金属音が一瞬だけ届く、というものである。風に紛れて遠くのアナウンスのような響きを聞いたと語る者、空のゴンドラ跡に人の輪郭が重なるように見えたと言う者、無人のはずの空間に人の気配を感じたと述べる者もいる。山岳交通に関わって命を落とされた方々への、静かな哀悼の気持ちを欠かしてはならない。 地元では、山の事故で亡くなられた方々への弔いが、山ノ神の祭事や登山道脇の慰霊碑を通じて細やかに続けられてきた。怪異話としてのみ消費するのではなく、山と人の往来の歴史、観光と暮らしの記憶として受け止める姿勢が住民のあいだで共有されている。 旧索道跡は急斜面で、足場の崩落や落石、急変する山岳気象による低体温、火山ガスによる体調不良の危険を伴う。心霊目的の単独行動は遭難の確率を著しく高める。訪問は厳に控え、草津周辺の登山は整備された遊歩道を昼間に歩き、地元のガイドの案内を受けるなど安全への配慮を欠かさず、犠牲となられた方々への祈りを大切にすること。
