
奄美大島廃ホテル(龍郷湾)
鹿児島県奄美市龍郷町の龍郷湾沿いに残る廃ホテルは、高度経済成長期の観光開発の痕跡である。亜熱帯の海岸景観を活かしたリゾート施設として開業したが、後に経営困難により放置された。建物は年月とともに緑に覆われ、湾の風景の一部となっている。 龍郷町は琉球王国の一部であった15世紀後半以降、ノロと呼ばれる女性祭司を中心とした信仰体系が形成された歴史を持つ。ノロは集落の繁栄を求めて神との仲介者として機能し、1879年の琉球王国崩壊後も祭祀は島の各地で継続されている。この地のユタ(女性霊媒師)による相談や祈りの伝統も、個人の生活に根ざした形で存続している。 廃ホテルが立つ龍郷湾は、かつて平家の落人伝説を持つ歴史的な湾である。こうした重層的な歴史層が、放置された建物を訪れる者に不可解な空気を感じさせる一因となっている。
