
淡嶋神社
淡嶋神社は和歌山市加太に鎮座する古社で、少彦名命を主祭神とし、医薬や裁縫、人形供養の神として信仰を集めてきた。社伝では友ヶ島に祀られた祠が仁徳天皇の代に現在地へ移されたと伝わり、江戸時代には淡島願人と呼ばれる者たちが人形を背負って各地を巡り、信仰を広めたとされる。境内には奉納された人形が2万体を超えて並び、雛人形や市松人形が隙間なく陳列される光景は独特の雰囲気を漂わせる。この人形群を巡っては、視線を感じる、髪が伸び続ける人形が安置されているといった噂が古くから伝わり、宝物庫の奥に一般公開されていない人形が納められているとも言われる。神社側はこうした噂について、人形が見る者の注意を引くために不思議な振る舞いを見せることはあっても、人に危害を及ぼすことはまずないとの見解を示しており、宝物殿は事前予約と一定の人数を条件に見学できる体制が保たれている。2016年には大型テーマパークのハロウィン企画に数百体の人形が貸し出され、供養目的で奉納した人からは意図と異なる扱いだとして批判が上がり、人形関連の業界団体からも抗議が寄せられる騒動となった。当時の宮司は人形を見てもらうこと自体が供養になるとの立場を示したが、この一件は心霊番組やインターネット上でも繰り返し取り上げられ、境内の人形群にまつわる怪異譚を広く知らせる一因となった。こうした経緯もあいまって、境内は歴史的な信仰の場である一方、怪異譚が付随して語られる場所ともなっている。

