
呪われた道 黒髪山トンネル
和歌山県田辺市の山岳地帯を抜ける黒髪山トンネルは、紀伊半島南部の険しい地形を貫く形で開通した道路トンネルである。山深い区間に位置し、長い勾配や連続するカーブを伴う構造から、開通以来、車両事故や落石被害が繰り返し報じられてきた歴史を持つ。地域の生活道路として欠かせない一方、難所として運転手のあいだに長く語り継がれてきた道筋でもある。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、夜間にトンネルへ進入すると、ヘッドライトの先に一瞬だけ人影のような輪郭が浮かんで消える、というものである。中ほどでラジオが乱れカーステレオが不安定になりノイズが混入した、出口手前で背後の座席が重くなったように感じて速度を落とした、トンネル入口で気温が急に下がった気がした、と語る運転手もいる。具体的な事故と直結する伝承ではなく、難所の歳月で命を落とされた方々の記憶が、夜の闇に重ねて語られている。 地元では、工事の殉職者や交通事故で命を落とされた方々への弔いの気持ちが世代を超えて保たれており、難所として注意を促す共有知識でもある。心霊スポットとして消費的に扱う風潮には、犠牲者遺族と地元住民への配慮を欠くとの違和感が示されてきた。 トンネル内および前後区間は速度規制・追い越し制限が設けられ、停車や徒歩進入は重大事故に直結する。心霊目的の徐行・停止は後続車に致命的な危険を及ぼすため厳に避け、通行は通常の交通として粛々と通過し、工事殉職者と事故犠牲者への弔いを胸に保ち静かに走り抜けること。
