
廃旅館「最上荘」跡
山形県最上郡最上町の山間部に位置する廃旅館「最上荘」は、昭和の高度経済成長期に温泉地として栄えた時代を象徴する建物である。同地域は瀬見温泉や赤倉温泉の湯治場として知られ、昭和期には団体客による観光需要が旅館経営を支えていた。しかし1970年代から2020年代にかけて、最上町の人口は14,015人から8,080人へと急激に減少。これは全国的な傾向と同様に、バブル崩壊による観光客の減少、少子高齢化に伴う後継者不足、経営者の老齢化が重なったものである。山形県内の温泉旅館では、かつての団体旅行需要が消滅し、老朽化と経営難のために次々と廃業する施設が増加している。「最上荘」もこうした地域経済の構造転換の中で、維持困難となったと考えられる。木造の建物と古びた看板は、湯治宿文化がかつて地域を支えていたことの痕跡として残されている。