
己斐峠
広島市西区己斐上と佐伯区五月が丘を結ぶ山道に位置する己斐峠は、かつて広島と周辺地域を繋ぐ重要な道筋であった。現在でも地域住民の生活道として機能するこの峠は、山越えルートの特性から夜間の通行が限定的であり、昼間でも人通りが少ない区間がある。峠周辺の植生が鬱蒼としており、四季を通じて湿度が高く、朝霧が立ち込めやすい地形的特徴を持つ。地形学的には、急勾配と急カーブが連続する道路構造が特徴で、過去には交通事故が記録されており、現在は事故を避けるための新道への付け替えが進められている。峠の名称「己斐」は古い地名に由来するものと考えられるが、具体的な語源や由緒については地元の郷土資料に記載がある可能性がある。ネット上で最も広く語られる噂は、峠沿いにあった廃屋で老婆や少女らが殺害されたとする一家惨殺事件で、殺されたとされる老婆の霊が目撃されるという話が伝わっているが、そのような事件の報道記録は確認されておらず、噂の舞台とされた建物は実際には工場など事業用の建物だったと指摘されている。峠道沿いには複数の地蔵が祀られ、これを全て見つけると呪われるという都市伝説や、事故から救われた人が地蔵に礼参りをした際に声を聞いたという話も語られている。一方で、1996年に発覚した広島タクシー運転手連続殺人事件では加害者が峠付近に遺体を遺棄したと供述しており、過去には車内での心中や首吊り自殺があったことも記録されている。山道特有の環境と交通事故リスク、そして実際に起きた事件・自殺の記録が積み重なったことが、このスポットに対する社会的関心を生み出しているものと考えられる。