
金峰山
金峰山は熊本市西区にそびえる標高665メートルの複成火山で、一ノ岳を中心にいくつかの外輪山を連ねる山塊の総称である。古くは飽田山と呼ばれていたが、奈良・吉野山の金峯山蔵王権現を勧請したことから現在の名に改められたと伝わる。山中には宮本武蔵が『五輪書』を著したとされる霊巌洞や雲巌禅寺、拝ケ石巨石群などの史跡が点在し、山頂展望台からは有明海や熊本市街を見渡せる観光地としても知られる。一方でこの山には、かつて年老いた者を山中に置いていく風習があったとする伝承があり、この記憶が心霊譚の土台になっているとされる。夜間に山道を車やバイクで走ると、ヘッドライトを灯さないまま背後から迫ってくる首のない乗り手の目撃が繰り返し語られ、木陰から老婆の姿をした霊がじっと見つめてくるという話も伝わる。山頂へ向かう道では、鎌を手に猛烈な速さで追いかけてくる「きんかんばばあ」という異形の存在の噂も広まっている。撮影した写真に無数の白い影が写り込むとの報告もあり、これらは山に捨てられた老人たちの無念が形となったものと解釈されてきた。

