
旧上山田病院
長野県上田市にある旧上山田病院は、千曲川流域の温泉地に近い立地で一九六〇年代に開院し、地域住民と湯治客の医療を長く支えてきた病院である。診療科の縮小と経営環境の変化、後継医師の確保困難などが重なり、二〇〇〇年代に閉院に至った。その後は管理が及ばないまま建物の老朽化が進み、信州の山あいに残る病棟は、戦後地方医療の一端を担った施設として地域の医療史に位置づけられる一方、心霊スポットとしての風評が広まり、無断の訪問者が後を絶たない経緯を持ち、地域の悩みの種ともなってきた建物である。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、無人のはずの病棟廊下を、白い患者衣のような人影が静かに横切るのを目撃した、というものである。診察室跡から問診のような低い話し声が漏れ聞こえた、階段付近で説明できない冷気と耳鳴りに襲われた、夜間に窓越しの光が点滅して見えたと語る訪問者が複数おり、消毒液のような匂いが季節外れに漂ったという話も寄せられている。 地元では、地域医療を支えてきた病院を娯楽的な廃墟として扱う風潮には強い拒否感があり、医療従事者と療養された患者の方々への敬意を保つよう、静かな姿勢で語られることが多い。医療史の証人としての建物への配慮が重視されている。 建物は崩落・床抜け・残置医療器材による負傷の危険が極めて高く、敷地への立ち入りは不法侵入に当たる。心霊目的の侵入は厳に控え、地域医療の歴史と亡くなられた方々への敬意を保ち、外部から静かに眺めるに留めたい。


