
吉備津神社
岡山市北区吉備津の吉備中山北西麓に鎮座する吉備津神社は、仁徳天皇の時代に創建されたと伝わる古社である。四道将軍の一人として吉備国を平定した大吉備津彦命を主祭神とし、古代より厚い信仰を集めてきた。 本社の建築は明徳元年から整備が始まり、応永32年(1425年)に足利義満の命で現在の建築が遷座された。本殿と拝殿は「吉備津造」と呼ばれる比翼入母屋造の建築様式で、全国で唯一の形式として国宝に指定されている。本殿に続く約360メートルの廻廊も重要文化財に指定されており、建築群全体が貴重である。 神事として知られるのが鳴釜神事である。釜が加熱されるときの音で吉凶を占うもので、最古の文献記録は『多聞院日記』に見られる永禄11年(1568年)である。江戸時代には上田秋成の『雨月物語』に「吉備津の釜」として著された怪異小説の題材となるなど、広く知られていた。 鳴釜神事の伝説的背景は温羅退治に遡るとされる。大吉備津彦命が退治した温羅の首を埋めた御竈殿の釜の下から、その唸り声が聞こえ続けたという伝承に由来する。この伝説と実在する神事が結びついた形で、後代に畏敬の対象として語り継がれた。