
道後温泉 椿の湯裏手廃旅館
道後温泉は約3000年の歴史を持つ日本最古級の温泉地で、明治27年の本館建造を機に近代和風建築として知られるようになった。20世紀を通じて旅館街は拡大と繁栄を重ねたが、高度経済成長期後の1988年瀬戸大橋開通がピークとなり、その後宿泊需要は緩やかに減少した。椿の湯は昭和28年の第8回国体開催時に新設され、地元客の利用を中心に続いてきた。本館周辺や沿道にある近代木造旅館建築の中には、営業を終了した後も外観のまま残された物件が存在する。こうした廃旅館は、湯治文化と接客文化が共存した時代の痕跡として、街角に静かに伫立している。老朽化した木造建築への認識の変化と、街並み景観の保全への社会的関心の高まりが、こうした物件の扱いを規定している。ネット上では、廃旅館周辺からかすかな音色や人影の目撃を語る投稿が散在するが、これらはおおむね、近代温泉文化の衰退と空間の経年変化に対する心理的反応として解釈できる。




