
白山ろくのホラーロード
石川県白山市の山あいに延びる旧バス道は、1980年代に路線が廃止されたのち、舗装が苔と落葉に覆われ、薄暗い廃道として山林に還りつつある区間である。白山信仰の麓に位置する一帯は山深く、冬季の交通難や峠越えの事故が古くから繰り返し語られてきた土地であり、地元では「ホラーロード」の通称とともに、夜間の単独通行を戒める言い伝えが世代を超えて受け継がれてきた小さな道である。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、夜更けに廃道を歩くと路面の中央に低く白い霧が立ちこめ、その奥に人のかたちをしたシルエットが浮かんでいるのを目撃する、というものである。乗っていないはずの最終バスのエンジン音が遠くから近づいては遠ざかっていった、路肩の藪から名を呼ぶような声が断続的に漏れた、撮影した写真の中央に光の帯が一本だけ斜めに写り込んでいた、と語る訪問者がいる。 地元では、山岳路で交通事故に遭われた方々や雪道で命を落とされた方々への弔いが、峠の祠への供花や合掌として、また白山信仰の祈りのなかで、世代を超えて静かに受け継がれてきた。怪異の話は娯楽の対象というより、峠道の険しさと先人の労苦を後世に伝える寓話としての側面が強い。 廃道は路肩崩落・路面陥没・熊出没・冬季積雪埋没の危険があり、夜間単独での進入は重大事故につながる。心霊目的の深夜訪問は厳に控え、訪れる場合は明るい時間帯に車道側から眺めるに留め、犠牲者への黙礼を欠かさないこと。




