
亀ヶ池
長崎県佐世保市にある亀ヶ池は、内陸の谷あいに広がる深い沼で、周囲を照葉樹の鬱蒼とした森に囲まれた静かな水域である。湧水と伏流に支えられた水は冷たく澄み、農業用水としても利用されてきた一方、底が見えぬ深さと急深な岸辺のために、古くから水難で命を落とされた方々の記憶が地域に深く刻まれ、「呪われた池」と呼び慣わされる土地として明治期の郷土記録にも書き残されている。 寄せられる体験談で繰り返し語られるのは、無風の夕刻に水面を見つめていると、底の方から金属を打ち合わせるような微かな音が断続的に届く、というものである。半身を出した人影が水面に浮かんだのを見たと語る訪問者、岸辺で名を呼ぶような小声を聞いた者、写真に水面とは別の白い反射が写り込んだと記す投稿が散見され、語りはどれも具体的な恐怖譚というよりは哀しさを帯びて静かに伝えられている。 地元では、池で亡くなられた方々への弔いが、彼岸の供花や水神への祈り、毎年の慰霊行事として静かに受け継がれており、現象の語りは怪異というより、水辺と暮らしの距離を伝える戒めとして穏やかに共有されてきた長い歴史と祈りの蓄積があり、地域の記憶として静かに語り継がれてきた土地である。 岸辺は苔と落葉で滑りやすく、急深な水深のため転落すれば自力での生還は極めて困難である。夜間の単独訪問は厳に控え、日中に対岸の遊歩道から景観を眺めるに留め、池で亡くなられた方々への深い哀悼の心を欠かさず訪れてほしい。


