
三重県 熊野市·その他
熊野古道(伏拝王子付近)
伏拝王子は熊野古道中辺路上、熊野本宮大社の手前に位置する王子社である。その名は、難行苦行を経た参詣者が此地に至り、初めて本宮大社を望見して敬虔に拝した故事に由来する。この地点は中辺路最大の難所を越えた先であり、長き道程を終えた旅人たちにとって、信仰の成就を象徴する場所だった。熊野三山への参詣は平安期の宇多法皇の時代に始まり、11世紀後半の白河上皇以降、皇族から庶民に至るまで老若男女が切れ目なく訪れるようになった。12~13世紀には参詣者が蟻の行列に例えられるほど膨大となり、その過程で参詣道沿いには百以上の王子社が整備されていった。伏拝王子もその重要な中継点の一つとして、巡礼の足を癒し、聖地到達の直前の心身の整える拠点として機能してきた。2004年には中辺路を含む熊野古道が「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録され、平安期以来およそ千年の信仰と巡礼の道が今日に伝えられている。