
篠山(篠山神社)
愛媛県愛南町と高知県宿毛市の境にそびえる篠山(標高1065メートル)は、飛鳥時代の用明天皇の頃、蕨岡家の庭先の樟に熊野権現が飛来して光を放ったのを機に山頂へ祀ったとの伝承を持つ山岳信仰の地である。江戸期には「お篠参り」と呼ばれる参詣が盛んになり、山頂の観世音寺は四国八十八箇所の番外札所としても位置づけられてきた(同寺は明治の神仏分離により廃寺となった)。山中には天狗にまつわる話が伝わる。弓の名手・助之丞が篠山に住む天狗の翼を射落としたところ、天狗はこれを恨まず、蕨岡家を永代にわたり盗難から守ると誓ったという。以来同家は戸締りをしなくても被害がなかったと伝えられる。この話は郷土の昔話集『愛媛のむかし話』にも収録されている。近世には篠山の森林資源をめぐって土佐藩と宇和島藩が対立し、江戸幕府の裁定で1659年に両藩の共有地とされ、1873年には県境の標石が建てられている。山頂の篠山神社は明治以降の社号で、かつては篠山権現と呼ばれた。修験の霊山として僧や参詣者が行き交った歴史を持つ一方、現在は登山者の訪れる山として知られ、山中の空気や社の佇まいに神域らしい静けさを感じるという声も聞かれる。