
野麦峠
長野県松本市と岐阜県高山市の境にある標高1672mの峠。明治から大正にかけて、飛騨の貧しい家の少女たちが信州・諏訪の製糸工場へ出稼ぎに向かう際、この険しい雪の峠を越えた。過酷な労働と長旅で体を壊し、峠の途中で力尽きた少女も少なくなく、「ああ飛騨が見える」と言い残して兄に背負われたまま息を引き取った政井みねの逸話は、女工哀史を象徴する物語として語り継がれている。多くの若い命が失われた峠として、慰霊と
峠は古来、村境を越える者を試す結界であった。修験道の行場、行き倒れの旅人、街道筋を彩った辻斬りや山賊の血が、杉木立の闇に折り重なる。山姥や天狗の伝承は、迷えば二度と戻れぬ山の不可知に対する、先人の畏れの結晶である。
全国 157 件

長野県松本市と岐阜県高山市の境にある標高1672mの峠。明治から大正にかけて、飛騨の貧しい家の少女たちが信州・諏訪の製糸工場へ出稼ぎに向かう際、この険しい雪の峠を越えた。過酷な労働と長旅で体を壊し、峠の途中で力尽きた少女も少なくなく、「ああ飛騨が見える」と言い残して兄に背負われたまま息を引き取った政井みねの逸話は、女工哀史を象徴する物語として語り継がれている。多くの若い命が失われた峠として、慰霊と

栃木県、塩原温泉と那須を尾根づたいに結ぼうとした県道266号「塩那道路」のうち、ついに開通しないまま自然へ還りつつある山岳廃道区間。標高1700m近い稜線を貫く壮大な計画のもと、陸上自衛隊の施工も加えて巨額が投じられたが、採算や環境の問題から全線開通は果たされず、中ほどの区間が車両の通れない廃道として取り残された。深い霧と切り立った斜面に閉ざされたその姿から、栃木県を代表する廃道・心霊スポットとし

三重県尾鷲市と熊野市を隔てる標高800m級の難所・矢ノ川峠(やのことうげ)。かつての国道42号はこの峠を九十九折で越えており、急峻な地形と濃い霧、たびたびの転落事故で知られた。1968年(昭和43年)に矢ノ川トンネルを含む新道へ切り替えられた後、峠の旧道と古いトンネルは打ち捨てられ、廃道・廃隧道として、また紀伊半島を代表する心霊スポットとして語られるようになった。 旧道や廃隧道では、霧の中に人影

滋賀県甲賀市と三重県亀山市の境をなす、旧東海道屈指の難所・鈴鹿峠。古来より箱根と並ぶ東海道の険所として知られ、山賊が旅人を襲ったという記録や、鬼女・立烏帽子(鈴鹿御前)の伝説が残る土地である。峠の旧道沿いには片山神社が鎮座し、行き交う旅人の安全が長く祈られてきた。現在は国道1号や峠の旧道に、心霊にまつわる話が数多く語られている。 旧道や峠の周辺では、夜間に甲冑姿の武者を見た、首のない人影が立って

広島市西区と安佐北区を結ぶ山道に位置する己斐峠は、かつて広島と周辺地域を繋ぐ重要な道筋であった。現在でも地域住民の生活道として機能するこの峠は、山越えルートの特性から夜間の通行が限定的であり、昼間でも人通りが少ない区間がある。峠周辺の植生が鬱蒼としており、四季を通じて湿度が高く、朝霧が立ち込めやすい地形的特徴を持つ。地形学的には、急勾配と急カーブが連続する道路構造が特徴で、過去には交通事故が記録さ

札幌市南区の豊平峡ダムは、頻繁な洪水に悩まされていた豊平川の治水を目的に1965年に着工、1972年に完成した高さ102.5m のアーチ式コンクリートダムである。竣工により定山湖という人造湖が形成され、札幌市への水道供給(全需要の98%)と道内の水力発電を担う重要な施設となった。豊平川は札幌市街地に何度も氾濫をもたらしており、このダムは急速に都市化する札幌を洪水から守る転換点となった。1926年に

丹後半島の付け根に連なる大江山(標高833m)は、京都府福知山市、宮津市、与謝野町の三市町村が交わる稜線に位置している。古来より酒呑童子を筆頭とする鬼の伝説が濃密に伝わる山であり、特に平安期の説話では源頼光と麾下の四天王による鬼退治の舞台として記録されてきた。現在、山中に鬼嶽稲荷神社が祀られ、参道沿いに「鬼の足跡」と称される岩や鬼の洞窟とされる窪地が点在する。麓の福知山市内には鬼の文化を伝える展示

千葉県夷隅郡大多喜町を流れる養老川の上流部にある粟又の滝は、房総半島を代表する景勝地である。落差30メートル、流下距離100メートルにわたって、なだらかな岩盤を清流が絹糸のように滑り落ちる光景が特徴で、紅葉の季節には多くの観光客が訪れる。 滝壺周辺および渓流一帯の岩場は地質学的に特徴的である。砂岩と泥岩の地層が交互に積層した地質構造のため、柔らかな砂岩が雨水により易々と浸食され、硬い泥岩は残留す

東京都西多摩郡奥多摩町の多摩川上流にある約500mの渓谷。秩父古生層を侵食した多摩川が、巨岩と奇岩の間を流れ、急峻な40m超の断崖を形成する。景勝地として江戸期から知られ、明暦3年(1657年)の江戸大火後は、復興に必要な奥多摩材の江戸運搬の中継地として機能した。 地名の由来は、飯場小屋に祀られた玉川水神社の森に営巣した二羽の鳩にさかのぼる。村人がこれを霊鳥として愛護したことから「鳩ノ巣」と呼ば

東京都青梅市の多摩川上流に位置する御岳渓谷は、環境省が選定した日本名水百選のひとつで、秩父多摩甲斐国立公園内の景勝地である。渓谷は巨岩が削った複雑な岩盤地形を特徴とし、約4キロメートルの遊歩道が整備されている。多くの落差や深い淵が存在し、季節ごとに多数の来訪者をひきつけるハイキングやカヌー競技の地となっている。 渓谷の南側には標高929メートルの御岳山があり、頂上に武蔵御嶽神社が鎮座する。この神

島根県の南西端・鹿足郡吉賀町は、中国山地の奥深くに広がる山林の町で、町内を縦断する林道のいくつかは夜間の通行が地元で控えられてきた場所として知られている。山の縁を走るとき、車を追いかけてくる正体不明の光に出会うという話が、深夜の林道走行を経験した運転者から繰り返し寄せられている心霊スポットでもある。 体験談として最も多いのは、後方から橙色や白色の光が一定の距離を保って追いかけてくるというものであ

中国地方最高峰として知られる霊峰・大山の山麓には、古来より修験道の修行場とされてきた登山道や宿坊跡が点在し、その一部の山道が夜明け前に「歩く者がいる」と語られる心霊スポットとして地元で知られている。大山寺の歴史と結びついて、修行僧の足跡が今なお残っているという伝承が、山麓の集落で語り継がれてきた。 体験談として繰り返し寄せられているのは、白装束のような人影が夜明け前の山道を静かに登っていくのを目